1.《ネタバレ》 熟成されたワイン同様に、単純ではない深みのある味わいのある映画なのかもしれない。
この映画はワインを飲むのと同じようにその深みのある微妙な味の変化が分かる人には
素晴らしい気持ちにさせてくれるかもしれないが、ジャックのように何を飲んでも同じという人には向いていないのかもしれない。
何を言いたいかというと、ジャックは自分だということ。
自分はこの深い味わいを心から楽しむことはできなかった。
アカデミー賞ノミネートや各賞で受賞しているため、モノ凄い傑作を期待していたのだが、充分面白かったし、笑い転げたりもしたが、なんともハマリにくかった気がする。
ワイナリーを巡る旅を通して、中年の男が自分の人生のピークを過ぎたあと、もう一度自分の人生を見つめなおすという話かと思っていたが、個人的には正反対の性格を有する二人の男のユーモア溢れる友情ものがたりにも映った。
小説家を目指すも、別れた妻への想いを引きずる陰湿なワイン好きのマイルスと、落ち目の俳優でありながら、結婚を控えた陽気な女好きのジャック。
二人はお互いの陰湿さや女好きに辟易としながらも、どこかお互いを助け合ったり、心配している。
ジャックはジャックなりにマイルスのことを心配していたし、朝帰りのマイルスを彼なりに喜んでいた。
マイルスもムチャクチャなジャックの頼みを親友だからこそ、命がけで果たしたように見えた。
そんな二人の友情は微笑ましかった。
この映画は人生を見つめなおしていなかったというとそうではない。
別れた妻への想いを捨て去るために起こした61年物のシュヴァル・ブランに関連する彼の行動は
素晴らしい。
まさにあれこそ、前の人生の区切りをつけて、人生の再スタートを切るための祝杯にふさわしいだろう。
役者の演技は、マドセンやチャーチよりもジアマッティはずば抜けて素晴らしい。
顔だけで哀愁漂うし、雰囲気で演技できるというのは特筆すべき点だと思う。