2.《ネタバレ》 深作欣二監督による東映実録ヤクザ映画の一本。このジャンルだと広島や九州が舞台というイメージが強いのだけど、本作はタイトルどおり北陸の雪国が舞台になっているのが新鮮。主人公の暴れ振りがとにかくすごく、演じる松方弘樹もノリノリで演じていて、実に楽しそうなのが印象的だった。(当初この役には菅原文太が予定されていたみたいなのだが、キャラ的には松方弘樹の方がハマっているように思う。文太でも見てみたかった気はするけど。)映画がはじまっていきなり冒頭から出てくる主人公が相手を雪に埋めてその周りをジープでぐるぐる旋回するというリンチ方法は雪国が舞台ならではという感じでとてもインパクトがあり衝撃的だ。この最初にやられる西村晃扮する主人公の父親の絶叫する姿などは異様にリアルで、もしかしてマジで埋めちゃってるのかと思ってしまうほど。でも、それ以外はそんなに勢いもなく、「仁義なき戦い」なんかに比べるとかなり平凡で中途半端な印象が残る。(面白い映画であることは確かなのだが。)それにネタとしては当時現在進行中の事件を扱っているあたりもネタ切れというかこの実録路線というジャンルの限界というものを感じされる部分もあり、公開中に主人公のモデルとなった人物が殺されてしまったなんてエピソードを聞くと本作が実録路線最末期の作品で、深作監督にとっても最後のヤクザ映画になったのも分からない話ではない。出演者に目をやっても松方弘樹以外で印象に残る役者が少なく、中でも深作監督の映画の顔とも言える千葉真一がそれほど印象に残らないのはちょっと残念な感じ。その中で主人公の小心者の叔父を演じるハナ肇がシリアスな役柄でありながらコメディ・リリーフとしても存在感を出していたのは良かった。予告では渡瀬恒彦が出ている(撮影中の事故で降板。伊吹吾郎が代役。)が、今年になって松方弘樹も渡瀬恒彦も亡くなってしまったのが惜しい。