9.《ネタバレ》 ホワイトハウスからペンタゴン上空を経て、一軒家へと至る見事な空撮。そしてケヴィン・コスナーの回想形式の語り。
元となるジョン・ファーローのノワール『大時計』(1948)の冒頭の大胆なカメラ移動を意識して大掛かりに変奏したオープニングである。
夜の路地に立つコスナーのシルエットや、緩から急へのドラマ展開などもノワールスタイルを踏襲したものだ。
一方では1980年代でのリメイクということで様々な設定の改変があるが、あからさまな性愛シーンや同性愛の設定など当時ならばコードに引っ掛った
シーンを採り入れる一方、喫煙のショットなどは逆に除かれているあたりが世相の差として興味深い。
ポラロイドフィルムをデジタル化して画像解析していくサスペンスも、今見れば何やら映画史の流れを思わせる趣向で面白く、
階段や廊下を使った追っかけや市街カーチェイスを採り入れたアクション志向も、オリジナルとの差別化要素だ。
アクション自体にも撮り方にもさして工夫はないが。
ドラマは国防絡みにスケールアップした分、痴情関係で右往左往するコスナーやジーン・ハックマンらのキャラクターが冴えないのは問題だし、
ショーン・ヤングの役柄は単なる色情狂的な人物にとどまり、魅力を欠く。