1.《ネタバレ》 佐田啓二、川津祐介という二人の人生の敗者が故郷に帰還するところから始まり、それぞれが故郷に受け入れられずに終わるという話だ。木下における「地方」は、けっして単純な理想郷ではない。地方ならではの跡継ぎ問題もあれば、工場で赤旗振ってる若者もいて(元士族を誇りとする笠智衆は気に食わない)、地方にも都会と同じように、安保闘争前夜の政治の季節が近づいている。ロケにいささか会津名所めぐり的なところがあって緊張を欠くが、ラスト、びっこ(脚の不自由な人)の青年が駅に駆けていく木下お得意の長い横移動は素晴らしい。木下映画では身体障害者の登場の頻度が高いような気がする、『永遠の人』にもびっこ、『カルメン故郷に帰る』『二十四の瞳』の盲人、戦傷者であることが多く、あまり弱者弱者した描き方でないところに特徴がありそうだが、ひとつ頭に入れておく注意点としとこう。