2.合戦シーンは見応えは十分で、大規模なモブと華麗な功夫の絶妙な組み合わせは香港映画ならでは。ハリウッドがどれだけの大金を投じても不可能なアクションを堪能できます。さらに硬派なドラマとしての魅力もあります。兵士の風紀や捕虜の処遇等を巡ってジェット・リーとアンディ・ラウが対立する場面ではどちらの言い分にも筋が通っていて、観客にも頭で考えることを要求してきます。盗賊団の頭をやっていたアンディ・ラウが人情や約束といった価値観で物事を判断するのに対して、官僚出身のジェット・リーは「天下をとるために、今はどう動くべきか?」と冷静な計算で意思決定を下します。そして、本心ではアンディ・ラウの意見を支持しながらも、ジェット・リーの論理的な説得に同調してしまう金城武が間に入るわけです。この3人の構図にはなかなか興味深いものがありました。アクションではなく男のドラマを中心に据えた構成には気合が入っており、なかなかの意欲作だと思います。ただ、残念なことに香港映画特有の作りの粗さが硬質なドラマに追いついていません。過剰演出・過剰演技が暑苦しすぎるし、そんな感情の押しつけが激しい一方で、物語における状況説明は不親切。「誰が」「何のために」という部分の説明が甘いために、時折話を見失いそうになりました。アクションもドラマも勢いで押し切ろうとするところが大陸ならではの欠点で、もう少し精密な仕事をしてくれていれば、見違えるような傑作になったと思います。