3.《ネタバレ》 親に捨てられて成長したガンドの、冷酷非情な取り立てはなかなかエグい。保険金を得るために、金を返せない債務者の手や足を虫けらのように潰していく。債務者の妻の懇願や、優しそうな母の祈るような目も、まったくガンドの心には刺さらないほど荒みきっている。
ヒリヒリとした雰囲気で引きつけられるのだけれど、そこからのストーリーに少し無理を感じたところが幾つか。それが引っかかって、話にのめりこむまでには至らず。
ガンドに母親と名乗る女が現れるのだが、この女の正体を考えたら、ガンドに突き落とされて足を折った債務者側の人間のはず。それなのに、息子の悪口を言うなと追いうちをかけて折れた足を踏みつけるのは、いくらガンドに母親だと信じさせるためだといってもできるものなのか。足を折られた息子とその母は、自分と我が子に重なるはずで、同じくガンドの被害者なのだから。観客を騙そうとしすぎて、無理が生じているように感じられた。
また、自分を捨てた母を激しく恨んでいたガンドが、母を案外あっさり許しているような印象。これまでの恨みを考えれば、たとえ解消されるにしてももっと時間がかかるはずに思える。
ラストはキム・ギドク監督らしい痛ましくてインパクトのあるシーンで畳み掛けてくるけれど、そこに至るまでにのめりこめないために衝撃が弱くなってしまうのが惜しい。