9.《ネタバレ》 2時間を超える上映時間で、特に大きな事件がおきるわけではない
日常が淡々と描写されているだけだったにもかかわらず、退屈さや間延びした感じもなく
一気に見てしまいました。全体的に流れるノスタルジックでほのぼのとした雰囲気は嫌い
ではありません。ただこの手の題材(戦争のあったレトロな時代を現在において回想する
パターン)がこれまでも多く用いられていて新鮮さがないことや、ここぞという盛り上が
りの場面がなかったこと、そして戦争の時代の暗さや悲惨さがあまり描かれていなかった
こと、などから、今一つ心に残るものもありませんでした。
ちなみに他の皆さんのコメントでは指摘されてはいないのですが、私が素直に感じたのは、
タキさんは時子様を強くお慕いしていたのではないか(言ってみればレズに似た感情を持
っていたのではないでしょうか)というものです。
そうでなくては、時子は女学生の頃から同性のあこがれの的だった、と松岡睦子がタキさん
に語る意味ありげなシーンが不要になってしまうのではないでしょうか(他にも坊やの
マッサージをしていて時子がタキの手が暖かいといって握ったことに対する、タキのぎこち
ない反応のシーンとか)。タキさんが手紙を届けなかったのは、(小中先生に言われた「夫
婦の仲は女中さん次第だ」という言葉に従って)、ひたすら奥様をお守りしたかったから、
そして、空襲で亡くなってしまった奥様の唯一の直筆の手紙を形見として最後まで持ってい
たかったからでははないか、そんな風に思いました。