1.《ネタバレ》 監督の近藤勇一という人物は、劇場公開前提の映画としてはこれが初だそうだが各種映像製作には以前から携わってきたとのことで、過去には美少女タレントのPVドラマのようなものも撮っていたらしく、今回のこれもその延長と思えば納得する。ちなみに主な出演者2人は同じ監督のショートフィルム「ネコヤドのハルとアキ」(2012)と共通である。
この映画でも、とにかく劇中女子(高校生)をきれいに可愛らしく映しているのが最大の特徴と思われる。男子の出演は極限して女子ばかりが多数出ているが、これは芸能事務所(イトーカンパニー)の意向もあってのことか。自分としては特に劇中少女が天使の扮装をして、新体操のリボンで踊るところが美しいので非常に和んでしまった。これで上手いのかはわからないが、少なくとも溝口恵という人は実際に新体操の経験者とのことである。またガールズラブっぽい雰囲気も出していたが、物語的には人体の物的な存在感を確かめる行為ということになっていて、この辺はうまく意味づけをやっていると見えた。
周囲の人間関係も和やかで、敵対勢力がいないのでひたすら微笑ましい雰囲気になっている。なぜか校内に変な爺様が出没していたが、この人物もやはり元気のいい若手女子が見たくて来ていたのに違いない。女子高生側の反応もユーモラスで結構だった。
ドラマとしては青春ファンタジーのようなもので、争いから逃げて孤立するのでなく、人間同士の関係性の中にこそ生きる喜びが生まれることが表現されていたようである。劇中の天使が人間世界に受け入れられていく過程が微笑ましく、別れの寂しさとともに未来の希望も見えていて、青少年向けとは思うが少しキュンとするものを見た気がした。
ストーリーを進める原動力になっていたのは、父親を亡くして部活も怪我で断念したのに屈託なく笑う女子だったが、無理して健気にふるまうだけでなく、この人のいわば包容力が地上の天使の存在を表現していたようで、これは恐らく母親のおかげだったのだろうと後になってから思う。なお全体として展開が早すぎる気がするので、もう少し長く作ってもよかったのではと思った(60分くらいとか)。
ほか映像面では、何度も出る高空の飛行機雲が天使の飛行を表現していたらしいのが印象的だった。ロープウェーから糸電話というのには突っ込まないことにする。