1.《ネタバレ》 街の片隅で、長年小さな鍵屋さんを細々と営んできた年老いた男、マングルホーン。家庭を顧みず、すぐにカッとなってものに当たる癇癪持ちな性格から妻とは離婚、今や大企業の一員となった息子とも疎遠になり、ただ唯一そばに居てくれる猫とともに孤独に暮らしている。そんな彼のたった一つの心の慰めは、かつて大恋愛を経験した最愛の女性とのキレイな思い出の中に生きることだった。だがある日、ずっと一人で生きてきた彼に再び好意を抱く女性が現れて…。名優アル・パチーノがそんな文字通り過去に囚われた孤独な男を哀感たっぷりに演じたヒューマン・ドラマ。歳取ってますます渋さを増すアル・パチーノの魅力に満ち溢れた本作、よくいる「昔は良かった」な偏屈老人のお話なのですが、画面の全体的な色調や哀愁溢れる音楽によってなかなか見応えのある玄冬ドラマ(青春ドラマの反対語)となっておりました。それにやはりなんと言ってもアル・パチーノ!!相変わらず渋くってカッコよかったです。唯一の同居人である猫のファニーにうだうだ話しかけながら夕食を作るとこなんか、ヒロインであるホリー・ハンターでなくても思わず手を差し伸べたくなっちゃいます。彼が思い出の中で思いっきり美化しているであろう女性の存在も必要以上にクローズアップしなかったのもいいですね。うん、ベタながらなかなか手堅く纏められた一本に仕上がっていたと思います。ただ、まあこういうお話なので仕方ないとは思うのですが最後まで若干辛気臭さが拭えないのと、ところどころ意味不明なシーンがあったので(あのスイカが大量に散らばった凄惨な事故現場のシーンはいったい何だったのでしょうか?)、そこがちょっとマイナスかな。それでもまあアル・パチーノファンなら観て損はないでしょう。鍵を飲み込んじゃう猫のファニーもなかなか可愛いしね。