1.《ネタバレ》 第二次大戦末期、逃亡兵の青年が盗んだ軍服で大尉に成りすまし、プチ横暴を働く、というオハナシ。肩書ひとつで周囲が逆らえずに彼のペースに呑まれて行ってしまう、というこの設定自体は、必ずしも「ニセモノ」でなくても成立するとは思うのですが、どうやら実際に起きた事件に取材した設定らしく、そして実際、偽物であることが肩書というものの虚飾性を際立たせるとともにラストの顛末にも効いている部分となっています。
ただこの作品。映像の多くにおいて、やたらと背景のボヤかして人物のみにフォーカスを合わせ、ここまでくるとちょっと不自然さすら感じます。収容所での虐殺シーンなどではもはや、人物がどこに立っていてどこを見ているのかが曖昧でわかりづらいレベルです(前後のシーンからわかるとは言え)。あまりのボケ加減に、ちょっとイライラ。
そこまでして人物の表情にフォーカスを当てる割には、主人公の狂気みたいなものもイマイチ伝わってこず。
曖昧さは、映画を見る人に「考える余地」を提供するものかも知れないけれど、作品の弱さにもなっているように感じます。