1.《ネタバレ》 人生とは、夢の中の夢なのか?
それを象徴するかのような老夫婦の最期の数日間とその後。
ギャスパー・ノエらしいセンセーショナルな表現はほぼなく、
オープニングを除いて分割画面で生々しく淡々と綴っていく。
心臓病を抱えた夫が映画評論の仕事に打ち込む間に、他方、認知症の妻は人知れず街に出て徘徊している。
夫が妻の扱いに苦悩している間、妻は混濁した思考でガスの元栓を開き、一方的に夫の原稿を破り捨ててしまう。
息子は老人ホームの移住を提案しても、父親は家を離れたくないと意固地で平行線を辿ったまま。
「このような光景はあなたの家族にもいつか起こることですよ」とノエは容赦なく突きつける。
通常なら一画面で撮れそうなシーンですら分割画面であり、人は常に孤独であることと分断を強調する。
夫がストレスから心臓病の悪化で旅立ち、妻も孤独の中で後を追う。
粛々と葬儀が行われ、二人の生きた証だった、雑然としたアパートの部屋も跡形もなく片づけられる。
生きることはモノが多く積み重なることだが、死んでしまえば関心もなくなりモノは無価値になる。
人は思い出しかあの世に持っていけない。
その無常さの中で如何に人生を全うしていきたいか再確認する。