2.《ネタバレ》 美女が生き埋めにされるという、陰鬱な導入部に吃驚。
ラストも「巨大な車で、敵のボス宅を滅茶苦茶にして終わり」という形であり、どうも「レッド・ブロンクス」(1995年)の二番煎じというか……
(こういうのが、ハリウッド映画らしさなんだ)という打算のようなものが感じられて、ノリ切れませんでしたね。
自分としては「ハリウッド映画」よりも「ジャッキー映画」が観たいんだよって、つい思っちゃいます。
主人公に感情移入する前に、悪党達との追いかけっこが始まってしまう(しかも、それがやたら長い)ってのも如何かと思うし、三人いるヒロインとイチャつく場面が随所にあるのも、何か妙な感じ。
この手の「ヒロインが複数いるハーレム映画」としては「プロジェクト・イーグル」(1991年)という前例もあるし、個々の要素は「ジャッキー映画らしさ」を備えているんだけど、何かそれがチグハグなんですよね。
そもそも主人公の恋人はミキであると結論が出てる訳だから「主人公は誰と結ばれるのか」とドキドキしたり、完結後の恋愛模様を想像したりする楽しみも無い訳で、ヒロインが三人いる必然性が薄かったように思えます。
必然性といえば、主人公が料理人であるって設定も、途中から有耶無耶になっちゃうんですよね。
唯一、序盤の「客の口に料理を放り投げるショー」は面白かったし、料理人設定も活かされていたけど、本当にそれくらいですし。
ジャッキーの自伝などを読んで、彼の経歴を知っていれば「若い頃、オーストラリアのレストランや建築現場で働いてた」って事で、料理人設定や、終盤の建築現場での乱闘シーンにもニヤリと出来ちゃうけど……
知らなかった場合、鑑賞後には(で、どうして料理人設定にしたの?)って、疑問符しか残らない気がします。
そんな具合に「完成度」や「構成力」といった点で考えると、とても褒められない代物なんですが……
「面白いか、面白くないか」で考えた場合、答えは「面白い」になっちゃうんですよね、これ。
「馬車とタクシーの衝突」とか「コーラの缶が路上に散乱し、あちこちで噴水のように中身が噴き出てる」とか、印象的な場面が随所にあって、それだけでも観る価値はあったと思います。
終盤における、無数のドアを活かしたコントも面白かったし、色んな大工道具を駆使したアクションも、流石といった感じ。
監督のサモ・ハンがチョイ役で出てくるのも嬉しいし、ジャッキー映画ではお馴染み(?)のリチャード・ノートンも、ラスボスとして良い味出してましたね。
本作のMVPには、この二人を推したいくらいです。
……以下、映画の内容とは直接関係無い余談なのですが、そもそも「ジャッキー」という名前自体、オーストラリアの建築現場やレストランで働いてる際に、同僚から「ジャッキー」と呼ばれてたのが由来だったりするんですよね。
つまり、本作における「建築現場でのアクション」「料理人という設定」って、ジャッキー映画としては凄くオイシイはずなんです。
それだけに、前者はともかく、後者の設定を活かせてないのが勿体無い。
素材は良かったのに、味付けが拙かったという……そんな印象が残る一本でした。