2.マレーネ・ディートリッヒの映画を観るのは、「情婦」に続いてまだ2作目だが、この人が映画史に残る大女優の名跡に相応しいことは、2作だけで充分に理解し得る。
「間諜X27」とういタイトルを見て、語意が分からなかった自分は、一体何の映画なのかちっとも分からなかった。
主演女優演じる未亡人が、政府の裏機関の人間にスカウトされ“女スパイ”に仕立て上げられる。そこでようやく、「間諜」=「スパイ」ということが理解できた。
“スパイ映画”として観たならば、古い映画だということをさっ引いたとしても娯楽性に乏しい。
物語自体のドラマ性も決して深みがあるとは言えず、面白味は薄いと言える。
しかし、それでもこの映画の価値を及第点レベルに押し上げているのは、言うまでもなくマレーネ・ディートリッヒの存在感に他ならない。
時代の混沌に巻き込まれつつ、最期まで「女性」としての凛とした姿を見せ続ける彼女の振る舞いに、性別を超越した“憧れ”を感じずにはいられなかった。