1.うーん、アメリカ人が東洋を題材にすると往々にしてヘンテコなものを作ってしまうというのは半ば常識ですが、かのキャプラもその宿命から逃れられなかったのか。チベットに関する専門家もついてたらしいけど、ホンマかいな?てな描かれ方ではあります。ま、当時も今も、西洋人の中にはアジアに対する過剰な憧れというか幻想があるのでしゃーないか。日本だって「少年ケニヤ」みたいにアフリカ人からすればトンデモな作品があったりするし。だからこれは東洋を舞台にしているというより、どこかの星を舞台にしたSF宇宙ファンタジーと思って観た方が良いかもしれません(余談ですが宇宙人の「グレイ」は東洋人がモデルとも言われているし、「猿の惑星」は原作者が旧日本軍の捕虜だった時の体験を元にしているそうです)。ともあれ、これはやはりキャプラの作品の中では異色作、というか、キャプラの理想主義がある意味凶暴なまでに過激に語られている作品だと思います。話によると、元々三時間位の作品の構想だったのをコロンビアのプロデューサー、ハリー・コーンが無理やりぶった切ってしまったとか。そのため描写不足の感は否めないし、やはりキャプラという人は小市民のささやかな幸せを描くことに秀でた人なので、この作品はまるで小津安二郎が監督した「乱」のような違和感を感じてしまいます(ひょっとしてキャプラはグリフィスやセシル・B・デミルみたいになりたかったのかな)。ただ、巨額の予算をかけた特撮や映像は素晴らしいし、【しったか偽善者】さんもおっしゃられていますが、一度紛失したフィルムを世界中を探して修復したスタッフの努力と熱意には頭が下がります。っていうか、邦画でもうフィルムがなくなっちゃったと思われてる作品だって世界中探せば見つかるんじゃないの?日本の映画会社も、見習ってほしいな。