2.《ネタバレ》 ついに狂四郎シリーズも最終回、死期が迫った雷蔵本人は自覚していたかもしれないが、大映はまさか本作でシリーズが終わるとは予想してなかったんじゃないかな。もちろん大団円として撮ってるわけじゃなく、今まで通りの通常運転のストーリー展開。でも雷蔵は体調はかなり悪く、立ち回りなんかはスタンド・インを使う場面もあったそうです。そういえばストーリー自体もかなり暗い滅びの物語に徹していました。奇しくも雷蔵最後のセリフが「貴様を救う神があるか、俺も確かめに行きたいものだ」というところが、結果的には意味深ですね。 大奥内での身ごもった側室と大奥総取締役との将軍後継者を巡っての争いがストーリーの基本。そこに邪魔な幕閣を消すために総取締役が操るニセ狂四郎や隠れキリシタンが絡むという大風呂敷を広げた脚本ですが、ニセ狂四郎が正体がバレた後でも本物を狙って襲う動機がイマイチ不明だし、将軍の跡継ぎ問題はけっきょくどうなっちゃったの?etc.けっこう粗が目立つ脚本なんですよね。今回のハニートラップはシリーズ中で随一のシュールな仕掛け、自分はてっきりこれは狂四郎の見ている夢なんだろうと観ているときは思いました。 こうして、私の“眠狂四郎マラソン”が一年かけて無事終了いたしましたが、全作を観てこのシリーズの感想は以下の通りです。●自分にとってシリーズ最大の謎は、若山富三郎が演じた陳孫です。初期の二作に狂四郎の好敵手として登場していずれの対決も決着つかず、シリーズを盛り上げるキャラになるかと思いきやその後はまったく登場せずで終わり。スタッフとしてはそろそろ再登場させようかと思っていたら、雷蔵の突然の死で機会を失したという感じだったのかも。●けっきょく、円月殺法って何だったんでしょうか?ただ剣を一回りさせて頂点で光を反射して眼潰しして斬りかかるって感じしかないです。殺陣が得意じゃなかった雷蔵なので迫力を出し切れなかったのかもしれません。●とはいえ約五年も続いたこのシリーズ、雷蔵=狂四郎がその後の時代劇に多大な影響を与えていることは疑いありません。徹底的に虚無的なそれまでの時代劇になかったスタイルは、70年代には木枯し紋次郎で華を咲かせたと私は思います。でも座頭市&眠狂四郎はやっぱ観たかったなあ…