1.僕は映画の技術的な事とかには疎いのだけれど、それでもこの作品の構図がとてつもなくこだわって撮られたのはわかる。温泉の水車や「眠る男」が眠る日本家屋、そして田園風景や山の緑が、とても美しく、特に時折挿入される月や花のカットは官能的ですらある。そうした中での「生」と「死」の描かれ方は、まさに幻惑的・神秘的。また日本風俗のエキゾチックな面(能の一場面や、様々な風習など)も描かれていて、外国の各種の芸術祭・映画祭で評価されたのも納得できる。
ただ、「芸術」としての完成度の高さは分かるのだが、反面あまりにも「浮世離れ」し過ぎてる印象がある。まるで「彼岸」からモノを見ているような、現実を拒絶しているような。登場人物に活き活きとした感じが見られず、はっきり言えばあまりに「芸術」し過ぎている様に思えた。映画って確かに「芸術」の側面もあるけれど、でももっと俗っぽくても良いんじゃないかな。芸術的でなくても美しくなくても、やっぱし僕は映画で「人間」が見たいのです。ラストの、河原で戯れる母と幼い子供のシーンなんか、とっても良かっただけに、残念。