2.冒頭の娘の結婚式。その幸せの宴の席、どこか思いつめたような表情を見せる父。演じるのは名優マストロヤンニ。
その日、彼は長年務めた教師の仕事を辞め、家族とも別れ、教師をしながら営んでいた養蜂業の蜂と共に旅に出る。
孤独、老い・・・。本作のマストロヤンニの姿からはそんな言葉しか思い浮かばない。
これまでの人生において家族と何があったのか、過去に何があったのかにはほとんど触れていません。
あのラストシーンが旅の目的だとすれば、かつての仲間を訪ね歩いたり、離れて暮らす家族の顔を見に立ち寄る彼の行動があまりにも悲しい。
ラストシーン、彼は指で地面を打つ。その指で彼は一体何を語っていたのでしょうか。
マストロヤンニはこの後、「こうのとり、たちずさんで」再びアンゲロプロスの作品に出演します。
両作品とも、思いつめたようなあまりにも寡黙な姿が印象に残りますが、
やはりマストロヤンニには寡黙よりも陽気で饒舌な男の役が似合いますね。