1.当時、この映画のテレビCMがなかなかに先鋭的でいい感じだったので、興味を持って映画館に行きましたが、実際の映画はCMのセンスは微塵も感じられない、当時でも十分に野暮ったい、古くからの日本映画の世界。「騙された!」と思いました。でも、だから駄目な映画という訳ではなくて。戦前にアメリカに渡った日本人の家族の歴史が語りかけてくるのは日本人としての自我。日本人である事が許されない時代を経て、日本人である事を喪失してゆく次世代の姿を通して、この国に生まれ、脈々と家や血の繋がりで歴史を築いてきた人々への敬いの気持ちを喚起させます。まさにこれぞ日本映画。ただ、問題は藤谷美和子から乙羽信子へのバトンタッチが違和感あり過ぎな事。どちらも非常に存在感のある、いい演技をしているのですが、いかんせん同一人物として認識するには無理がありました。映画を見ている人間に、藤谷美和子がいなくなっちゃった、という喪失感を与えてしまうのは、全くのところ、想定外な状態なんじゃないかと。