3.《ネタバレ》 アメリカでは、製作費35百万ドルに対して、7.6百万ドルの興行収入しか上げられなかった大コケ作品。本作は興行的には失敗作といっていいだろう。
特に、ストーリーらしきストーリーはなく、ラッセル・クロウがただ単にはしゃいだり、遊んだりしている映画なのかもしれない。
見る人によっては確かに飽きるだろう。
しかし、個人的にはこれは結構好きな作品だ。
夏休みにプロヴァンス、又は自分の故郷にでも帰ったかのような錯覚に陥るほどの心地よさを感じる。
日々の忙しさを忘れて、自分の少年時代を思い出しながら、ゆったりと時間が流れていく。
徐々に自分までもが癒されていくかのような感覚すら感じさせる映画だ。
美しい風景、美味しそうな食事、美しい女性たちにも酔いしれる。
「ブラックホークダウン」もそうであったが、脚本に書けないような微妙な空気感を描くことをリドリー・スコットは得意としているようだ。
このような演出が可能なのは、数少ないベテラン監督だけだろう。
まさに熟練した味わいを堪能できる。
仕事だけに生きる都会生活を捨て去って、田舎で静かに自分の人生を楽しむというのは、本当に憧れる生き方だ。
こういった逃避的な生き方は、アメリカ人には理解できないのだろうか(それとも十分に余裕があるのか)。
幸いなことに、今の自分はそれほど仕事が忙しくもなく(以前は月に200時間残業して何のために生きているのか分からないときもあった)、映画を楽しむ余裕があるのが救いとなっているので、完全に逃避する必要はないのだが、仕事や都会の生き方に疲れた大人に見てもらいたい息抜き映画だ。