16.《ネタバレ》 後半の理屈台詞に辟易して、黒澤さんはこんなにシナリオが下手だったのだろうかと思ったのですが、おそらく何らかのメッセージを乗せようとすると、説明的になってしまうのでしょう。要するにそういうのは得意ではないと。だからやっぱり、この人は娯楽作品の方が評価が上がるようです。メッセージ性が強くて、本当にこんな夢を見たとは信じられず、リアルでない話を作るエクスキューズとして「こんな夢を見た」と言っているだけだと思われます。実際のところ、どちらでもいいんですけど。それに、それとは違った意味での「夢」が込められているようにも感じられました。 全体としてはつまらなかったわけではなく、むしろ楽しんで鑑賞しました。とにかく画がきれい。暗くてよく見えない話もありますが、それでもそれなりに見せてしまうのはさすが。気に入ったのは桃の話と、ゴッホの話。特に後者はほとんど映像だけで、「ゴッホの絵をセットにしたかっただけだろう」なんて思えて、おかしかったです。最後の鴉がアニメーションに見えてしまって、不思議な感覚でした。 おおむね「異界」の者との接触を描いていますが、その異界が結局「自然」であり、最後になって自然のままであるのが一番であると締めるのは、よい構成でした。監督も変に肩肘を張らず、気楽に作ればよかったのにねぇ。 【アングロファイル】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2017-03-01 09:19:43) |
15.《ネタバレ》 見事な映像美の連続で大変見応えのある映画でした。桃畑での舞いや水車の村の風景の日本画的な美しさ。また赤富士や鬼哭の話の中に見られた陰と陽の色彩のコントラストの美しさ。まさに映画といった感じで天才黒澤明のセンスが光っていました。夢の中のストーリーは結構単純で、前半は自然や死者、霊などへの畏敬の念。後半では、科学の力に頼りすぎてしまった人間の末路についての話となっています。8話目の水車の村の話が、「今後人間はどうすればいいのか?」についての黒澤監督なりのメッセージとなっています。近代技術を拒み、自然を壊さぬよう自家発電で生活していけばいいではないか。お葬式もたくさんの苦労をし、一生懸命生きてきた故人をお疲れ様の意味も込めて最期は明るく送ってあげようよ。ということなのだが、自家発電で生活というのは正直、単純すぎて無理があるかと思いました。ただ黒澤監督の熱い思いは伝わってきました。1~8話の中で、トンネルの話が一番印象に残りました。トンネルの中から行進の足跡が聞こえてきて、暗闇から兵隊の青白い顔が浮かび上がってくるシーンはゾッとしてしまった。また気になったのが、鴉の話の中でゴッホが「描きたい風景を探すな。どんな風景だって見方を変えれば美しいものさ。」という言葉です。黒澤監督といえば、満足な映像が撮れるまでは何週間でも粘ると聞いていたので意外でした。何か映画撮影に対して心境の変化みたいなものがあったのでしょうか?本作は紛れもなく芸術作品であるが、内容は明快で分かりやすく誰もが楽しめ、鑑賞後には皆で語り合いたくなってしまうところがこの映画の魅力ではないでしょうか。 【スノーモンキー】さん [DVD(邦画)] 7点(2014-12-28 00:38:03) |
14.《ネタバレ》 カラーになってから急に芸術志向になりましたよね、他の方からの評価は芳しくないようですが、僕はカラーの黒沢映画も好きです。特に色使いが素晴らしくて、何気ないワンカットの美しさにハッとさせられます。1つ1つの映像が、1枚の絵画のような美しさを有していて、そこらへんはさすが、画家を目指していただけあるなと思いました。全8話あるオムニバスの中で、特に良かったのが赤富士と最後の話です。赤富士は未来を予知していたとしか思えず、黒澤監督の先見性に脱帽でした。原発の安全性を訴え危険性をひた隠しにする構図は、まんま福島の事故を見ているようで身震いしますね。映像面でも赤く燃える富士山のインパクトは強烈で、ビジュアル面のセンスも冴えに冴えていました。最後の話は自然を破壊する人間への批判と、黒澤監督の死生観が込められています。パレードのような葬式も、本来葬式というのは祝うものであって嘆くものではない、天寿を全うして死ねる事ほど嬉しいものはないと語っています。この作品を作った当時、80歳とかなり高齢であったため、迫りくる死を感じていたのでしょう。死の意味を問いかけるとともに、生への喜びに満ち満ちている事に感動しました。 【キリン】さん [DVD(邦画)] 7点(2013-02-11 00:08:02) |
13.《ネタバレ》 今この様な時代だからこそ、特に政治家と某電力会社の皆さんに観て欲しい作品である。 【たくわん】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2013-01-05 13:23:25) |
12.《ネタバレ》 【日照り雨】軒先のセットは氏の家を再現したもの。黒沢氏の父は元軍人で厳しかった。家の厳しさよりも怖ろしいもの見たさの好奇心がまさった子供時代。虹はあこがれで冒険の象徴。人生の冒険の始まり。日照雨は「蜘蛛巣城」の森のシーンにつながる。【桃畑】4男4女の中で育つ。16歳で夭折した姉への追慕。伐採された桃の木の精霊との交感。伐採されたのは氏の幼年時代。涙が流れる。家族愛にも経済的にも恵まれた家庭環境であったことが窺い知れる。【雪あらし】努力すれば報われるという氏の人生哲学。雪山登山は困難を極める映画作りの象徴。雪女は母性の象徴。「雪は暖かい、氷は熱い」は、逆境こそが人生の糧になるということ。母親には甘えることができたようだ。画家を目指して挫折。映画界に入り、監督になれたのは33歳。天才ではなく努力の人だった。【トンネル】氏は体が弱く、兵役経験無しだが戦死は身近だった。さまよう戦死者の魂。戦争の無意味さと残酷さ。彼らの死に誰も責任を取らない。戦後すぐ反省をこめて撮った「わが青春に悔なし」の頃の夢か。爆弾を巻いた犬は特攻の象徴。若く散った特攻隊員の魂が氏の良心を激しく吠え立てる。【鴉】尊敬するゴッホ。画の修行時代ゴッホの画を見たあとでは全てのものがゴッホのタッチに見えたという。「どんな自然も美しい。自我を失くすと自然は夢のように絵になる。そのためには機関車のように働く」映画作りに共通する言葉。ゴッホを追うのは画家になりたいという望み。飛び立つ鴉は魂の解放の象徴。【赤冨士】「生きものの記録」と同趣旨。人間は自然の一部であることを忘れ、科学で便利さを追求し続ける人間の愚かさ。氏が子供時代、父の生家の秋田で生活した経験が影響している。自然と共存する人たちの生きざまを知ったのは貴重な経験。 【鬼哭】核汚染により鬼と化してしまった人間の地獄絵図。鬼の苦悩は氏の苦悩そのもの。人間と自然を心より愛しているが故に現実の人間に対する怒りと煩悶は強い。氏の人類への警告は生半可なものではない。 【水車のある村】 水車は自然を利用する人間の知恵の象徴。理想郷を描く。石に添える花の挿話は体験談。葬式の歌は、自然と調和して生きている人たちへの賛歌。103歳の老人は老境に達した氏の理想の姿。初恋の人は青春の象徴。その葬儀で嘆き悲しむ代わりに、喜び祝い行進する。すでに死を受容する心境にある。 【よしのぶ】さん [DVD(邦画)] 7点(2011-01-24 10:27:12) (良:2票) |
11.《ネタバレ》 テレビでやっていて、何となく観ていてとっても印象に残る映画でした。 ゴッホが出てくる短編。ゴッホが得意とした黄色がなんと綺麗に映像にできたことがびっくりでした。そして鬼が出てくる短編の何と恐ろしい映像。陸軍の亡霊が出てくる短編も上官の使命を描いていて、こういう映画は黒澤しか撮れないじゃないかと思いました。 最後に笠智衆の短編。旅をしている人簡素な田舎で老人に色んなことを聞くが「そんなものはいらない」の答え。文明は不要なものにあふれていて、本来の人の姿が見えなくなってきているのかなと考えさせられました。いろんな意味で何度も観たい映画だなと思います。 【ダイバー】さん [地上波(邦画)] 7点(2009-09-29 21:39:57) |
10.難解ではあるが、非常に綺麗な作品でした。最後のお話が特に好きです。原子力の話は小学生の時に観て凄く怖かったけど、今観たら・・・。「夢」といってしまえばどんな無茶な設定でもOKなんじゃねえかと思いました。 【Fukky】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2007-11-09 15:48:03) |
9.たまに笠智衆さんの「水車の村」だけ観たくなります。何が良いという理由は特にありません。常日頃の忙しく働いている現代人。私を含めて一体何を得たいのでしょうか?幸せを掴む為?名誉を得る為?。人はただただ自分の欲を満たすためにひたすら働く。突き進んで行った先に何があるわけでもなくただ”人”として生まれてから何億分の一の一人として死ぬ。さて”生きる”ってなんだろう?。多分これは人が生きている上で最も多くの時間を費やしてしまう題材だと思う。生きるということを重く捉えて日々「なぜ?どうして?人とは?」と悩む方もいれば、あっけらかんと「やりたいことすればいいじゃん」と言う方もいる。人って色々な考えを持ちながら生きている。「これが正解」と言う答えが無い。答えが無いからこそ人は生きていけるのだろう。 ちなみに私は毎日”夢”を見ます。毎日というより寝たらほぼ100%夢を見ます。ほとんど5分後にはどんな内容だったか忘れますけどとにかく1年365日見ない日は無いと言えるぐらいいつも見ます。一度ぐらいカウンセリングを受けたほうがいいのかもと思ってしまうぐらい見てしまいます。さて普通夢といったらファンタジーな感じ(例えば空を飛ぶとか)やその人が持っている願望なんかを見ると思うのですが、私はただ場所やキャスティングが変わっただけの「もう一人の自分の日常生活」という実にありふれた現実的な夢ばかり見ているのです。楽しいときは楽しいけど悲しいときはあまりにリアルなので夢で感じたことを現実に”涙を流す”という行為をしたこともあります。そして楽しい夢こそすぐに忘れて嫌な夢ほど記憶に残り、その日の気分や機嫌にも大きく作用します。毎日夢を見るけどまったくコントロールが出来きず見たい夢ほど見ることが出来ない。なんとなくいい感じの夢を見ててもなぜか夢の中で現実的な自分がいて「夢だからといってそれは出来んだろう」と行動をストップしてしまう。私にとって”人生”と”夢”とは似ていて、これはもう一つの人生を見ているのかもう一つの夢を見ているのかよく分からない。 【tetsu78】さん 7点(2004-06-05 13:48:37) |
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8.映像がとても美しかったです。どのエピソードもおもしろかったです。 【ギニュー】さん 7点(2004-01-29 14:58:48) |
7.桃畑や狐の嫁入りなど、せっかく映画史に残るであろう映像美を見せながら、夢のいくつかにベタなメッセージ性を感じずにはいられず、しかもそれを言葉で説明してしまっているのが残念でした。黒澤監督の冗長さについては、ピーターの前歴があるわけですが、細やかな計算をもってしてもどうしても出てしまう彼の癖なのでしょうか。最後の葬式は、映像だけで喜びを表現して欲しかった。笠さんの表情で十分伝わったはずです。赤富士と鬼は続いている夢であるべきです。 【神谷玄次郎】さん 7点(2003-12-18 03:08:56) |
6.桃の節句、富士山、鬼、水車は結構好きです。だたショートショートなので言いたい事を喋らせすぎてるのがチョッと気になります。 【亜流派 十五郎】さん 7点(2003-09-27 12:54:52) |
5.巨匠、黒澤明ともなると見る夢が根底から違うものです。ストーリーはさておき、作品全体に共通して言えることは、幻想的な映像美が見ものだった。夢なので当たり前か(笑)。 第1話「狐の嫁入り?」はコワ~イ日本の民話だが、雰囲気ある演出が絶品。最後までドキドキさせられた。第2話「桃畑」は、純粋な少年の視線から描いている辺りは童話そのもので、お世辞抜きにすべてが美しかった。第4話「亡霊?」の爆弾特攻犬に吠えられるシーンは“ゾッ”とした。第6話「赤富士」は映像が強烈で悪夢そのもの。最後の第8話「水車の村」は、ファンタジックに彩られた大人の絵本というところか? 総じて“日本”を感じれる人には、満足出来る作品ではないカナ。 【光りやまねこ】さん 7点(2003-08-02 21:50:55) |
4.大学の頃に大勢で連れ立って観に行って、帰途は不評の嵐でした。う~む。まあ8話オムニバスということで、確かにまとまりがないという憾みはあります(私も映画には第一に求心力を求めたい)。が、一話毎に、舞台が限られているので、黒澤監督お得意の超長廻しワンカットなど効果的に使われており、「らしい映画」には違いないと思います。「映画」よりむしろ「舞台」っぽい黒澤映画のイビツさが強調されてしまった、とも言えそうですけどね。最後は笠智衆の説教を聞いて寅さんの気分に浸りましょう。 【鱗歌】さん 7点(2003-07-13 13:34:07) |
3.映像の美しさにはまりました。狐の嫁入りシーンや桜並木や笠智衆、ゴッホが印象深いです。 ただし最後の放射能絡みの話はちょっと俗っぽい感じがします。もし長さんと高木ブーで鬼やってたら、、、まんまドリフじゃん。 【じゃん++】さん 7点(2003-06-04 03:22:32) |
2.黒澤映画はあまり観ていないのですが、この映画はとても好きです。一般的に評価は低いようですが。ただ、オムニバス調で区切りごとに題名が出てきますが、あれは不要です。というのは、映画全編を一夜の夢ということにして、夢というものは脈絡のないものなので、画面が白くなって、なんの説明もなくそ知らぬ顔で次の話に行く方がよかったのではと思うためです。 【ごはんですよ】さん 7点(2002-09-23 23:20:28) |
1.巨匠が見た夢だから映画になるんだろうが、こっちとしてはもっと怖い夢を幾らでも見て来た訳で、これぐらいの作品を評価して良いか戸惑いも感じる。しかし夏目漱石の「夢十夜」にも見られる、曖昧で中途半端な表現で抑えるところが夢らしく味わいもある。そこいらのオムニバスものにはない綺麗な映像も楽しめた。個人的には1話目が良かった。 【イマジン】さん 7点(2001-04-09 12:39:53) |