2.《ネタバレ》 シニカルでファンタジックな、まさにウェス・アンダーソン版『小さな恋のメロディ』と呼ぶのが相応しいかも。でも『小さな恋のメロディ』と違うところは、大人の事情というか視点のウェイトが大きいところでしょうか。平行に移動するカメラや劇中劇といったアンダーソン映画のお約束ごとは相変わらずといった感じですが、サムとスージーの森の中の逃避行やたどり着く入江など、いつもは造りこんだ人工的な世界でストーリーテリングするのに自然描写を織り込んでいるのが新鮮でした。家の中でラウド・スピーカーを使うフランシス・マクドーマンドや外界を眺めるのには必ず双眼鏡を使うスージーは、奇妙な暗喩ですけどこの母娘の微妙な距離感を象徴させているんでしょうか。 この監督の映画は観る人の好き嫌いがはっきり分かれる傾向がありますけど、自分はこの作風は好きです。