2.《ネタバレ》 これはもう、『エネミー・ライン』の北アイルランド版としか言いようがないプロットです。ハリウッドのプロデューサーだったら絶対に派手なアクションをぶち込んだストーリーテリングにすること間違いなしですけど、そこは英国映画ですからとっても地味です。でもアクションじゃなくてサスペンスで勝負、といった心意気はひしひしと伝わってきます。 この映画の主人公フック二等兵が酷い目に遭わされたのも、ひとえに隊長の無能がなせる業としか言いようがないですね。いくら何でも、員数を確認せずにあんなに慌てて撤退しますかね。でも指揮官が経験不足なら、こういうことは実戦でも十分に起こりうることでしょうからリアルです。この映画の怖いところは、ただの住民の抗議行動と思っていたら、いきなり兵士が射殺されちゃうところです、それも顔に弾をぶち込むんですからもう処刑です。これで観客は「この街はとんでもない場所だ」という現実に否応もなく直面させられるわけです。はっきり言って、カトリックとプロテスタントが憎しみあっている土地だと判っていても、日本人のわたくしには心情的にはさっぱり理解できません。アングロサクソン系とケルト系の抗争だと言われても、白人と黒人の様な見た目の違いがあるわけでもないですからね。そこに加えて英軍内部にも理解不能な動きがあって、複雑すぎます。最後まで説明なしでしたが、あの軍服を着ないで両陣営に出没している軍人たちは何なんですかね?SAS? こうやって観ると、古くは『邪魔者は殺せ』から始まって英国vsIRAをプロットにした映画は多々撮られていますが、どの作品も一筋縄ではいかないクセものぞろいです。「英国vsIRA映画に外れなし」なのかもしれません。