1.《ネタバレ》 怪演といえばニック・ノルティ。ニック・ノルティといえば怪演。
選んでいるとしか思えないほど異様な役どころばかりやるノルティだ。というか本人も異様な人物らしいので当然か。
そんなノルティの出演作の中でもひときわ異様さが光る本作のブレナン刑事。なんといってもそのゲイ志向が…強烈です。
フツーに男が好きならどうということはないのに、ゲイを軽蔑しているのに実は好きであるという屈折したところが…ブレナンの人間くささを感じさせる。
が、本作はブレナンにノルティを使ったことで根本的に失敗してしまったと思う。普通にノルティを使ったらそれは「野獣」に見えてしまうのです。悪徳刑事ブレナンが野獣だったらあまりにもあたりまえじゃないですか。
だもんだから最後に刑事部屋でキレてあっけなく死んでしまうあたりも「まあそんなことだよなあ」という感じでいまいち感慨を呼ばないし、それどころかゲイを襲っても「野獣だから」で済んでしまったりする。だっていかにも野獣だし。
それではつまりません。ブレナンはもっと複雑でしぶとい男でなければ。
女のことでメソメソ悩み続けて島まで追っかけていって終わってしまうティモシー・ハットンは自分で言っているように「弱さ」の象徴なのでしょう。「社会」とか「悪」とかから逃げて行き着くところが必ず「女」のとこだというのがアメリカ人らしいですね。クインのような悪人が当選して政治家になろうが関係なくて、それよりも女とよりを戻すことや母親の遺族年金や父親の名誉のほうが重いのです。
彼は一言でいえば志の低い男です。ある意味ではブレナンよりもダメなやつといえるかもしれない。なので、ライリーをあまり美化するべきではなかったでしょう。ハットンの見た目的なものも手伝ってなんとなくウブなお坊ちゃんに見えていますけど、本当はクイーンズで育った下層階級出身のアイルランド系アメリカ人なのです(ブレナンだってアイルランド系ですね。)。なんかごまかされている気がしますね~。