1.《ネタバレ》 1950年代、ゴミ収集の仕事をしながら家族を養うアフリカ系アメリカ人、トロイ。彼とその家族の一見平凡に見える生活を描きながら、この時代に生きる黒人たちの、貧困、差別、閉塞感等々、様々な目に見えない〝フェンス〟を炙りだす社会派ヒューマン・ドラマ。主な舞台は、この主人公家族が住む一軒家とその裏庭、そしてストーリーもずっとこの家族が交わす会話でのみ進行していくという内容に、「これはもしかして舞台劇を映画化した作品なのかな」と思って観ていたら、案の定、デンゼル・ワシントンが過去に主演した舞台を基にしたものだったのですね。今回、D・ワシントンが監督も務めたということで彼の並々ならぬ熱意が伝わってきます。そう、この作品はとにかくそんな実力派の役者陣が織りなす圧倒的な演技力を堪能するためのものだと言っても過言ではないでしょう。それくらい役者の演技は素晴らしいものがあります。特にアカデミー賞を受賞した、主人公の妻役のヴィオラ・デイビスには圧倒されました。この時代、黒人で女性で主婦というもっとも弱者の象徴である彼女。その姿を通して、社会の中で虐げられた人たちの抑圧され続けてきた魂の叫びが聞こえてくるようでした。確かに内容的には地味ではあるけれど、なかなかの良作と言っていいんじゃないでしょうか。