1.コレを観てて思うのは、ニール・ジョーダン監督ももしや子供の頃はイジメっ子だったのではないかと。そのくらい堂に入った描きっぷりでございます。アイルランドを舞台に、主人公の少年フランシーの狂気が描かれますが、そこには、キューバ危機を背景とした核戦争への不安が色濃く投影されてます。少年は成長せねばならない、とにかく周囲は待ってくれないのである。かつての縄張りであった「噴水」は他の少年達に譲ることになるし、友人ジョーは離れて行く、そして少年の家庭も順調に崩壊していってしまう。現状に安住できない一方で、将来もまた核の不安に閉ざされた状態。そんな中、やがて少年のアイデンティティは、日頃からこころよく思わぬニュージェント家への、理不尽な敵意へと集約されていく。というわけで、何だか殺伐とした話のようですが、幻想的な描写、ユーモラスな音楽によって、何だか戯画的な雰囲気があります。特に、少年に語りかける聖母マリアの幻影が、本作における潤いの一つとなっています・・・ちょっと安っぽい映像ですけどね、えっへっへ。不思議な味わいの一本です。特に豚の屠殺場の描写は奇妙に生々しく、印象に残ります。