1.《ネタバレ》 山田尚子監督の『平家物語』を見ていたお陰ですんなりと世界に入ってゆくことができたわ。『平家物語』のヒロインびわが見て触れて琵琶法師として語ってきた世界がここに語り継がれていて、ってまるで地続きのように見ることができて。
山田尚子監督の繊細な、静のアニメーションに対して湯浅監督は一貫して動のアニメーション。アニメーションの快楽は今回も爆発しているわ。
盲の琵琶法師ともののけの如き男がバンドを結成する物語、歌曲と舞踊が生み出す快感が画面いっぱいの絵巻として繰り広げられて。今に通じる青春映画のようでもあるわ。ただし、その背景には源氏に滅ぼされた平家の無常な世界があって、権力の介入による不条理な弾圧があって。
平家の亡霊を成仏させるたびに犬王が獲得してゆく人間らしさはまるで社会に摂りこまれてゆくようで、体制に反発し、あくまで信念を貫く友魚こそがロックな生き様を見せてくれるようで、二人の対比が最後には切なく迫ってくるわ。
ただ、ロックよりは琵琶や太鼓や鐘の音色のみで魅せて欲しかった感はあるのね。本来はそこに聴こえないハズのギターやベースの音がジャカジャカと入っていると、その音にこそレイヴ感が存在しているような印象を受けてしまうのよね。今の音に重ねる事で過去と今とを繋いでいるのは判るのだけれども、舞台装置も含めて今になり過ぎちゃってる、今の野外ライブを見てるのと感覚一緒、って感じになっちゃって。そこはもうちょっと工夫、音にも絵にも見せ方にも時代を意識させるデザインが欲しかったかな。
それから重要な歌唱シーンで肝心の歌詞が聴き取りづらかったのが残念。でもそれはハコの音響設備の問題かしらねぇ? 出力的には問題なかったのだけれども。
あと、中盤のかなり長いライブシーンはちょっとテンション維持できてなかったかも。そのアニメーションの暴走的な歪さは湯浅監督らしい、湯浅監督の魅力でもあるのでしょうけれども。
この無常なる青春映画、今に通じる表現についての物語、難点はありつつも楽しみ、そして考えさせてくれる映画だったわ。