9.《ネタバレ》 西部の男にとって「嘘つき」「腰抜け」と侮蔑されることが何よりも耐えがたい屈辱。
そうした侮蔑には死をも覚悟して「勇敢さ」を証明しなければならない。
婚約者のパットも未来のパートナーに勇敢さを求める。
が、主人公は人に見せる勇敢さを嫌い、どんな屈辱も甘んじて受けることを良しとする。
「男らしい」の概念の違う二人がうまくいくはずもない。
男のダンディズムはカッコいいが、家族に黙って二日も家を空けて心配をかけたのは責められても仕方ない気はするけど。
監督がウィリアム・ワイラーだけに、一味違った西部劇。
ガンに頼らず、西部劇的な強さを求めない主人公というのがおもしろい。
ヘネシー側とテリル大佐側の確執を、ドンパチもあまり使わず人間ドラマとして見せてくれる。
パーティに乱入するなど、ただの粗暴オヤジかに見えたヘネシーが、終盤では大佐とイメージが逆転。
卑怯な手を使った息子を許さない筋の通った男気はカッコいい。
一方、相手を叩き潰すことに執着する大佐は、傲慢さが鼻につくように。
大佐についていけなくなったスティーブらと、それでも一人で敵地に向かう大佐。
スティーブも放っておけばよかったのに、見捨てておけなかった西部魂が紛争をややこしくした。
結局、最後は老雄二人で決着をつけようとするが、相撃ちの共倒れで戦いの虚しさを際立たせる結果に。
主人公の尽力もむなしく、根の深い争いを止められなかった。
理性が感情を制し切れなかった悲劇。
世の中の紛争や対立は、きっとこんなものなんだろうなと思わせる。
タイプの異なる二人の女性が絡んだラブストーリーもあって楽しめる。
ただ、主人公がスーパーマン的な活躍で紛争を解決するわけでもなく、従来の西部劇に求めるようなカタルシスはない。
そういった点での物足りなさは感じるかもしれないが、ある意味現代的なドラマといえる。