2.《ネタバレ》 幸せな家庭にある日異質な来訪者が・・・という展開はサスペンスによくあるが、
この映画はまったく逆で、少し不穏な家庭に親切な友人が現れる。
人の親切というものは、裏を勘ぐり始めると恐ろしいものである。世の中、タダより高いものはない。
しかし無碍に断るのも角が立つ。ハリーという男が恐ろしいのは、彼が心底ミシェルのためと
思い込んで行動している点だ。そしてハリーの行動がエスカレートしていくと、いつしか観客は
ハリーとミシェルの会話がまるで自己の内的葛藤のように聞こえることに気がつく。
家庭におさまりつつも、なにか遣り残した思いを抱えたままの少年がミシェルの中で疼き出す。
ハリーは本当に存在しているのだろうか?プリュンヌは?彼らはもしかしたら、ミシェルが
生み出したシャドウなのかもしれない・・・全てに始末がついたエンディングの清々しさは、
解釈によって幸福にも恐怖にもなり得るだろう。