1.昔からの女友達に「今まで観たので良かった映画、何?」と聞いた所、挙げてくれた内の一本です。とにかくいきなりの親殺しのシーンに圧倒されてしまった。特に「女」と「母」がぐちゃぐちゃに入り乱れながら水谷豊に迫る市原悦子の凄まじいくらいの妖艶さにはただもう、びっくり。それに比べると原田美枝子はちょっと可愛らし過ぎて、確かにヌードはすごいし胸もきれいなんだけど、素の演技の時「淫乱な少女」を演じ切れてないのがちょっと残念。まあ当時17,8歳だからしょうがないのかもしれないんですけどね。全体として、荒削りなところもあるけど、気迫というか気合というか、そういうものがびしびし伝わってきました。親との対立と邂逅(まあ殺しちゃってるんだけど)、性に対する欲望と嫌悪感、そういったどろどろしたものをドバァッと画面にぶちまけた感じ。親殺しっていうからもっと鬼畜な感じかと思ってたけど、そういうのではありませんでした。水谷豊演じる主人公が父親を刺してしまったのは、ある種はずみみたいなもので、ある部分では父親を憎んでたんだけど、別の部分では尊敬し、慈しんでいたんですね。だからあんなに苦しんで、混乱してたんでしょう。終わり近くで水谷豊が自殺を図る所では「むむ、死ぬのか。死んで終わるなんてただの逃げだぞう」と思ってたんですが、ああいうラストシーンで良かったと思います。まあ万人にお勧めできる映画ではないと思いますが、ドロドロを抱えた若い人とかヘビーなものを見たい人にはいいと思います。蛇足その一。この映画はDVDで観たんですが、特典映像の監督のインタビューを観ると昔の日本映画の無茶苦茶な様子がわかってなかなか面白いです。蛇足その二。長谷川監督は連合赤軍の企画があったのにポシャッてしまったそうですが、是非観たいなあ。まだまだ伝説になるお年ではないでしょう。蛇足その三。この映画、あの「チイチイ」こと地井武男(字、あってるかなあ?)が本来わりと重要な役で出てたはずなんですが、編集の結果、ほとんどカメオ出演のようになっています。チイチイ、かわいそ。