1.《ネタバレ》 セガールの出演作が片っ端から「沈黙の~」という邦題がつけられるのは、単にレンタルビデオ屋のアイウエオ順配置で固めて並べてもらえるからだろう、くらいに思ってたのですが、一方でこの作品のように、「セガール主演作でなくてもそう見せかけることができる」という二次的な効果もあるんですね。そう見せかけることのメリットは、よくわかりませんけれども。
という訳で、主演はトム・サイズモアであって、セガールは準主役といったところの爆弾処理のオジサン。持ち前の苦み走った顔だちは、プロフェッショナルな雰囲気を漂わせつつ、それでも劇中でこれだけ何度も爆破シーンが登場するのは、やっぱり彼の腕前が大した事ないお陰、なんじゃないかと。
さて、こんな映画に高得点をつけたりすると、「オマエは本気でこの映画が素晴らしいと思ってるのか!」と言われそうですが、いや、そんなワケないじゃないですか。なにせ、こんな邦題つけられちゃう作品ですよ。
とは言え、あくまでコレ、90分ほどにスッキリまとめた、低予算娯楽作品。こういうジャンルなんです。これをダメと言ったら、あの素敵な70年代東映のおバカ作品群が、全滅してしまう・・・。B級のノリ、B級の手腕。この手際の良さ、テンポの良さ。そりゃヘンなところもありますよ、例えば冒頭のセガールが爆弾処理する場面、画面が寄った時と引いた時でタイマー表示がまちまちで、あと何秒で爆発するのかよくわからん。けど、ま、いいじゃないですか。
爆弾魔の役がデニス・ホッパー、というのがいささか心許なく、『スピード』の時のダメダメっぷりが再現されるんじゃないか、と心配になりますが、前述のように、今回は本領を発揮して爆破シーンの連続。規模はともかくそれなりに盛大に吹き上がる炎、爆発に巻き込まれて吹っ飛ばされる人間、このあたりの演出は、最低限の予算で最大限の効果を上げている、と言ってもいいのではないでしょうか。職人芸。
爆弾処理オジサンとして比較的おとなしくしていたセガールも、このまま退場しては沈黙シリーズの名が廃るとばかり(?)、終盤にはセガールアクションを炸裂させます。ちと控えめな印象もありますが、一応はセガールアクション、有難く堪能しましょう。戦いの中、敵の一人がガラスに叩きつけられたあと、遠ざかる悲鳴だけを残して画面から消える。要は高いところから落ちて絶命したんでしょうなあ、という場面を、落下シーンをわざわざ撮ることなく表現してる訳で、一種の手抜きが、演出上のスパイスになっている。この演出を職人芸と言わずして、何と云おうか(・・・だから、手抜きだって)。
セガールが活躍すれど、乗り越えなければならない過去を抱えているのは、トム・サイズモア。だからやっぱり彼こそが、主人公。なのでした。