3.《ネタバレ》 「テレフィーチャー」という、一般には耳慣れないが所謂テレビ映画として制作された「宇宙戦艦ヤマト・テレビシリーズ」の続編
夏休みの真っ只中、正に映画を放送するような時間帯で長編テレビアニメ特番としてヤマトの新作はお目見えした(後に、劇場公開もされた)。
ヤマト大好きっ子である自分は、テレビスポットCMで新作の放映を知り、最高に待ち遠しい夏休みを迎えた
まずは、「新たなる旅立ち」というタイトルに思った事。後に制作される映画「ヤマトよ永遠に」とのセットで考えれば前日譚として理解できるネーミングではあるが
そんなことは露知らずの小学生にはどう映ったか。
(以下「ヤマトよ永遠に」のネタバレにまで踏み込みますのでそちらをまだご覧になってない方はご注意ください)
実質として新たなる旅立ちというタイトルは、メタの意味合いのほうが強い
一度自ら区切りをつけたはずのヤマトという知的財産に再び命を与えて(本作にとどまらず、この先も連作して)商業展開というと、なんだか聞こえがよくないが
それを歓迎したのも私のような続きを見たがるファンである。もう一度、強いヤマトが観たかった。ただそれだけで十分だった
ヤマトを語る際まず筆頭にあがるのは、やっぱり音楽が最高ということ。新たなる~でも勿論それは健在。印象的な楽曲が作品のグレードを幾段も底上げしている
暗黒星団帝国のテーマとでもいうのだろうか。何度も何度もかかって、もう一生忘れられない。それと、艦載機コスモタイガーの楽曲は以後、定番化する名曲
続いて意匠。まるで未知との遭遇からゲスト参加したようなシャンデリアっぽいけどキラキラかっこよくて黒い敵巨大旗艦プレアデスは
重厚なのでキービジュアルのようにほぼ一枚絵で済まし、それが作画の安定に貢献している(さらば以降のヤマトでは巨大物の描写でわりとスタンダード)(一部背景動画的に描写されたりもしてはいる)
のちに浮遊要塞と改名されるキラキラネオンの自動惑星ゴルバも、セルでは止めをスライドさせるか、動いても消灯させて作画の負担を軽減している
敵キャラクターは暗黒星団帝国人(また、帝国なんだね)。全員坊さんのように頭髪がなく、衣装も非常にさっぱりしていて、捉え方によっては貧弱デザイン極まる
小さい頃にはそれらは一切気にならなかったが、今考えるとドル箱ヤマトにしては製作期間(=予算)の都合を感じないでもない。(でも、プレアデスもゴルバもめちゃくちゃ好き)
メルダースという司令官がクールな立ち回りで、好きだった。でも、死んでくれとも思った
「さらば~」の敵・彗星帝国(ガトランティス)が遊牧騎馬民族・元寇の置き換えだとするなら、暗黒星団帝国はなんだろう。
一説によれば松本零士作品世界における連携で、銀河鉄道999の機械化母星を敵の下敷きにしたらしい。頭が人で体が機械のサイボーグ。なるほどね
(次作「ヤマトよ永遠に」にてそれらは露見するが、「新たなる~」の時点では全くの謎だった。「~永遠に」がとんでもないシナリオだったので、設定に齟齬が生じている気がしなくもない)
一部内容が尺の都合でカットされていて、セリフの辻褄が合わない。ビデオ等媒体化してもそれが復活することはなかった。コンテでアフレコはしたが作画されていない可能性あり
ラスト付近に流れる島倉千代子さんの挿入歌は、いささか全体の雰囲気と合わず、私はあまり好みではなかったかな
これら物語途中にかかる歌謡は次作「永遠に」などにも継承されるが、元々プロデューサーのもつ音楽業界とのコネクションを半ば強引にねじ込んだと私は受け止める
シナリオは正直物足りない。デスラーが恋慕で目が眩み、付き従ってきた部下をあたら死なすなど、かなり難点がある。自爆という決着もいただけない
それでも娯楽の少ない、弱っちい小学生の夏休みの夜を最高に盛り上げてくれて、私にとっては映画「さらば宇宙戦艦ヤマト~愛の戦士たち~」の次に好きな長編ヤマト作品。