3.《ネタバレ》 1990年にイラン北西部で起こった大地震。
前作『友だちのうちはどこ?』の舞台になったコケールとポシュテの村も例外ではなく壊滅的な被害を受けた。
主人公役の少年の安否を確かめるべく、キアロスタミ監督とその息子が訪れた実体験を再現したのが本作。
震災から6か月後に撮影されたのもあり、
復興で瓦礫を片付けるシーンや幹線道路の渋滞シーンがセットやCG合成にはない生々しさを映し出し、
劇映画とドキュメンタリーの垣根が曖昧になっていく構成に唸る。
前作にも登場したジグザグ道への郷愁といい、再会した村人との会話が印象に残った。
「地震とは腹をすかせた狼で神の仕業ではない」
「映画は年寄りをもっと年寄りに見せるのが芸術なのかね」
「死んだ人が生き返れば人生を大切に生きるようになるでしょ?」
地震で家族を喪いながらもそれでも家事をこなさないといけないし、いつ死ぬか分からないから結婚を決めたり、
ワールドカップを観るためにテレビのアンテナを立てる。
ドキュメンタリー(現実)ならではの被災者が持つ生命力と、フィクション(虚構)ならではの魔法が詰まっている。
遠方に主人公役の少年を見つけたことを匂わせながら、タンクの男と協力し合って、
ジグザグな急坂をオンボロの自家用車で登っていくロングショットの長回しはまさに「そして人生はつづく」だった。