1.けなされっぷりが見事であまりにも可哀想なので、私はこの作品とユルグ君の弁護をしたいと思います(笑)。彼は変態ガイキチ野郎と揶揄されますが、実は神経性の胃炎で薬が手放せないという位繊細な人です(本人が多分出てましたね。男の同僚役のブロンドののっぽは彼じゃないかな)。私は死の三部作は全部観たけれど、結果として彼の作品は全部好きです。先に「死の王」と「シュラム」を観たからこその考えかも知れないのですが、こいつは映像作家ですよ。この作品も前衛作品なんです。そういうと非難轟々だろうけれど。彼の作品には凄いこだわりを感じます。映像、演出、編集、音楽。私はみなさんのように「キモい汚いグロい気色悪い大嫌いだ最悪だモラルがない…」という風に激しい感情は全く湧かなかった。むしろひどく醒めた穏やかな気持ちでぼんやり観てました。そうして観ていて思ったのは、この監督は明確に撮りたいもの、やりたいものがあって、そのヴィジョンにのっとって行動し、全く妥協が出来ない職人気質の不器用な人なのだろうな…ということ。そしてそれが認められないという彼の悲哀を画面から感じるんです。ストーリーや屍姦の話なんて私にはどうでもいいんです(笑)。興味も湧かない。でもこの作品に関しては内容云々よりも、その姿勢に惹かれた。「少数派の決然とした主張」みたいな。そういえば「ピンク・フラミンゴ」にも同じことを感じたなあ、と。偏愛にせよ、愛があるんです。この監督は1つの作品に1年位かけて、出来ても毎回即座に裁判所命令で上映禁止処分を下されるんです(笑)。今は危険人物として当局に監視されています。どうやって食ってるんですかね。マイノリティーの悲哀を身を以って表現してくれる、自己犠牲精神溢れるクリエイターですよ(笑)。ちなみに屍姦云々というテーマが気になる方がいらっしゃったら、「キスト」という作品がありますよ。あっちは画的には全然汚くないですけどね。