4.《ネタバレ》 時系列をいじくりながら、あっちの人こっちの人と対象を変えながら、結局『エキゾチカ』と同じことをしている。しかしその深い傷の原因をラストシーンではなく中盤に持ってきたことで『エキゾチカ』で「衝撃」に逃げてしまったテーマを真正面から描くことができた。一見散漫に並べられるそれぞれの家族の事情は文字どおりの家族の事情を見せるにとどまらず見事にアトム・エゴヤンの世界を作り出している。自分の体の、魂の一部を喪失したかのような、それほどに大切な人の死をどう受け入れどう生きなければならないか。答えなど無い。少なくともお金で癒されることはない。そもそも何をもっても癒されるはずもない。受け入れがたい喪失をただただ時間をかけてでも受け入れるしかない。受け入れることだけに注力しなければならない。弁護士にもその危機があった。毒蜘蛛に咬まれた赤子の首にナイフをかざしながら思ったこと。自らの勇気ある行動いかんで喪失を免れる可能性。疎遠の娘はまだ喪失していない。