18.《ネタバレ》 ありきたりのただのラブコメかと思って鑑賞していたが、山アリ谷アリと意外と盛りだくさんに描かれており、今観ても十分楽しめた。
わがままな富豪の娘をきちんと教育していくクラーク・ゲイブル演じる新聞記者の姿が印象的だ。
「(金もないのに)チョコレートに金を使うな」「ヒッチハイカーにメシをたかるな」と無計画さや他人に依存する姿勢を正していく辺りはどこか父親的であり、人間的な厳しさを感じ取れる。
そのような人間的な教育によって野生のニンジンをかじる姿から、彼女の成長が見て取れる。
また、「バスの中で彼女が目を覚ますまでずっと待っており、かつ自分の衣類をかけてやる」「ジェリコの壁を作って、一線を守る続ける」「人妻には手を出さない」という辺りはとても紳士的な態度が感じ取れる。
さらに、「夫婦の演技によって他人を欺く」「ヒッチハイクのやり方を講習する」辺りにはユーモアかつ頭の良さが感じ取れ、太平洋辺りの島に暮らしたいと語る姿からは今までのイメージを覆すような夢や愛も感じられる。
このようにクラーク・ゲイブルが非常に魅力溢れる男性に描かれており、彼女が彼に惹かれていく理由は、十分すぎるほど本作からきちんと読み取れるようになっている。
懸賞金は要らないが、旅費はきちんと貰うという、筋は通す態度から、彼女の父親もそのような人間的な資質を容易に見抜いたのだろう。
逆に、ゲイブルがわがままな富豪の娘である人妻に惚れる理由は深く感じられないが、魅力的な相手からの素直な告白を受ければ、男として応じざるを得ないか。
ヒッチハイクが出来ずに困っていたときに自分の足をみせて止める辺りには彼女の魅力も垣間見られる。
「ドーナツ」や「肩車」などで二人の距離が徐々に縮まっていくこと感じられるので十分といえば十分か。
また、娘の本当の幸せを祈っている彼女の父親や、ゲイブルの本気を見抜き、恋が上手くいかなかったことを悟る新聞記者の上司もいい味を発揮しており、非常に人間味の溢れる作品に仕上がっている。