1.《ネタバレ》 キューブリックもかくやと思わせる、スタイリッシュな冒頭に比べ、グズグズになだれこむラスト、ここまでのアンバランス、これぞフーパーとおっしゃる下のレビュワーさんはいかにもご明察。
さて、トビー・フーパーは日本人に対して何か特別な思い入れでもあるのか?
…と思わせるに充分な、意味深な作品だ。理由は以下に。
被験者の男性(ブライアン)に、極端な低身長の男優を配したこと、ここを見逃してはいけない。コレは決して偶然などではない。他の研究スタッフと並ぶと子供に見えるほどの低身長に童顔、これは何を意味するのか。ブライアンとペギーの夫婦の、ままごとのようなお子様風な外見は何を意味するのか。
もちろん、「日本人」である。世界で唯一原爆の被害を受けた民族、である。「低身長」に「童顔」=「日本人」を意味しているのである。
そして、ラストでルウがサムに言い放つ暴言、これは「オデッサファイル」のラストとそっくりである。ナチスが優性生殖を推進したことにより生み出された主人公が、元ナチに同じことを言われるのだ。「その健康な体は、誰のおかげだと思う」。
フーパーが「オデッサファイル」を見逃しているはずはない。この映画は、フーパーによる「アメリカ帝国主義版オデッサファイル」というべきものだと思う。グズグズで終わりはするが。
それを念頭に、例のルウのセリフを点検すると、すごいことを言っている。
「お前を生み出してやったのは、俺だ。」(もともとそんなもの無いところにアメリカの占領政策により強引に生み出された〝民主主義日本〟)「本当はお前なんか殺してもよかったんだ。」(天皇を生かし、虎視眈々と割領を狙っていたソ連から守り、アメリカの州の一つにもせず、日本という国を存続させてやった恩義)「でも、もう生かしておけないから死ね」(植えつけられた〝民主主義〟が行き過ぎてしまった日本を方向転換させるために、アメリカが行ったとされる数々の謀略を意味すると思われる)。
…で、トビー・フーパーは日本人に対して何か特別な思い入れでもあるのか?に戻るわけだ。それとも単に、「オデッサファイル」の向こうを張る作品を作りたかっただけなのか?
よく知らないが主役の俳優は絶妙なキャストだ。右目のあたりに残酷さが漂っているところがよい。突如現れて火を噴くジョン・ランディスはご愛嬌。