76.《ネタバレ》 「ラブ・アクチュアリーを観た日」という曲を聴いた勢いで、元ネタである本作も鑑賞。
所謂「グランド・ホテル」形式の群像劇であり、エピソードの殆どを「恋愛」で纏めている点と「クリスマス」という特別な日にスポットを当てた点が、当時としては斬新だったのでしょうね。
この映画から数年後に「バレンタイン」や「大晦日」にスポットを当てたラブコメ群像劇が作られていますし、影響力の強さが窺えます。
登場人物が多く、同時進行するエピソードも多くて、難易度の高い作品なのですが、それをギリギリで混乱させず、破綻させずに仕上げてる手腕も見事。
特に「場面転換の際に音楽を用いて、各話の繋ぎを自然にしてる事」には感心させられましたね。
主人公の一人が歌手である点も含め、全体的に音楽の使い方が上手かったと思います。
個人的に一番好きなのは、義理の親子であるダニエルとサムが、少しずつ距離を縮めていくエピソード。
そして、ラブストーリーとして一番好きなのは「小説家と家政婦の恋」になりそうですね。
後者に関しては「言葉が通じない彼女とも、キスによって互いの想いを確認する」「片言のポルトガル語で告白したら、相手も片言の英語で答えてくれて、互いに相手の為に言葉を習ってたと分かる」って場面が凄く良かったし、映画全体の構成を考えても、この二組の話が主軸になってた気がします。
それと、オールスターキャストも魅力的でしたが、やはり一番印象深いのは、ローワン・アトキンソン。
カメオ出演のような形で「店員役」として登場し、それで出番終了とばかり思っていたのに、終盤まさかの再登場でしたからね。
しかも、デパートでは傍迷惑だった「緩慢な動作」が、空港では恋する少年を助ける形になってたりするんだから、これには脱帽。
つまり「誰かにとっては迷惑な人物が、他の誰かにとっては有益な人物と成り得る」って事を描いている訳で、群像劇ならではの魅力があるんです。
正直、各キャラの繋がりが「たまたま知り合いだった」「血縁だった」程度な事にはガッカリしちゃったけど……
彼の存在だけでも、本作を群像劇にしたのは正解だったと言えるんじゃないでしょうか。
その他、欠点としては
・歌手からマネージャーへの想いが、友情なのか同性愛なのか分かり難い。
・サムがダニエルの事を初めて「パパ」と呼んだ場面が、アッサリし過ぎていて戸惑う。
・クラウディア・シファー演じるキャロルが出てくる場面は意味深なのに「本当に偶々、ダニエル憧れのクラウディア・シファーに似てるだけ」ってオチなのが残念。
等々が挙げられそうですが……
これらに関しては「脚本が説明不足」というより「演出が拙くて、場面の意味が伝わり難い」って印象を受けましたね。
やはり、リチャード・カーティスは「監督」というよりも「脚本家」気質の人なんだと思います。
後は「アメリカに行けば俺はモテまくるはず!」って一念で渡米した若者が、本当にモテモテになっちゃうオチだったのは吃驚したとか、精神を病んだ弟がいるサラだけは意中のカールと結ばれず可哀想とか……気になったのは、そのくらいかな?
サラという例外もありましたけど、彼女は彼女で「恋愛」よりも「姉弟愛」を選んだと言えそうな感じですし、色んな形の「愛」を肯定し、優しく包み込んでるような雰囲気が心地良かったです。
「ハッピーエンドな恋愛映画」の代表として、曲のタイトルに選ばれるのも納得なくらいの、良い映画でした。
……ちなみに、2017年の続編ドラマ(米国版)では、サラがカール以外の男性と結婚する展開になってたりもするんですよね。
本作を鑑賞後にモヤモヤが残ってしまった人は、そちらも是非チェックして欲しいです。