1.舞台はキリスト教弾圧の時代の架空の町。町でただ一人の牧師を皆で逃がす。すんなり逃げればいいものを、この牧師、人がいいというか、要領が悪いというか、はっきり言ってどんくさい。そこにかなりイライラさせられるのだが、牧師自身もイライラしている。犠牲者を出しながらも自分だけが逃げるという行為が正しいのか否かというところで。神のように扱われながらも生身の人間としての弱さを持つ牧師の葛藤。そんな生真面目な役にぴったりなヘンリー・フォンダが相変わらずな苦々しい表情で好演。全体的に暗いムードの中で神という題材にふさわしい光と影の演出が効いている。セリフも少なく淡々と展開されるも全く退屈にならないのは、まさにこの光と影を使った映像での表現がお見事だから。どこまでも開放感の無いこの作品が興行的に大失敗に終わったことは止むを得ない。しかしこの芸術的映像美はフォード映画の中でも屈指の美しさだと思うし、これがなければメキシコ人カメラマンのガブリエル・フィゲロアとの出会いもなく、ということは『アパッチ砦』も生まれなかったかもしれず、そういう意味でもフォード映画の中でも重要な作品だと思う。