1.《ネタバレ》 コメディータッチでテンポよく娯楽作品の匂いをプンプンさせながら、戦争の不条理とそれに翻弄される人々の無力さ悲しさを徹底的に表現している。
「あいつ」とそれを取り巻く人々の状況、心情を、シュールでポップでコミカルな表現でありながら、実感を持って確実に描写できており、映像的には非現実的でコントのようにストーリーが展開するのに、反戦という重いテーマが全くスポイルされていない。いや、逆にその本質が強調されている。
人々が国のために戦うというのは妄想で、自分が守りたい人のために戦うのであって、それですら、戦争に巻き込まれた状況で自分を無理やり納得させて鼓舞する屁理屈に過ぎない、というメッセージがひしひしと伝わってくる。
明るいゆえに、コミカルなゆえに、より悲しく虚しい物に見えるこの手法は、岡本喜八監督ここにあり、という感じでまさにお見事というしかない。
娯楽作品としてお薦めできる映画ではないが、「名作」を見たいという人には是非この映画も見てもらいたい。