1.この作品は、面白いか面白くないかといえば、面白くない。理由は簡単で「カタルシス」が感じられないから。何かはっきりした結論が示される訳でもなければ、(例えば「華氏911」のブッシュのような)明確な「悪」が顕在している訳でもない。マクナマラは確かに東京大空襲や、或いはベトナム戦争の北爆・枯葉剤の投下に関与し、反戦運動が高まった折には「独裁者」「殺戮者」と轟々たる非難を受けた人物ではあるのだがしかし、そもそも「戦争」という巨大な狂気の中での個別の作戦・戦闘の是非を問うたり、或いは特定の個人(だけ)に戦争責任を負わせる(←余談だけど、これっていかにも近代西洋的発想だよなー)というのは、あくまで部分的な解決にしかならないのでは、と思う。この作品を観る限り、マクナマラという人物は善人ではないが悪人とも言えず、彼の行動についても擁護はできないけれど、全面的に非難することもできない(僕はね)。結局「戦争の霧」というタイトルが示すように「何故ベトナム戦争は泥沼化したのか?」或いは「一体何が戦争を引き起こすのか?」という問題についての明確な答えは提示されないし、観る側には何とも言えないモヤモヤが残る。んが、ここで語られているマクナマラの言葉は、それを肯定するにせよ否定するにせよ、彼のような立場を経験したものでなければ語り得ないもので、それなりの説得力を持っている。DVDに収録されているカットされたシーンも含めて、特に日米の政治家には観て貰いたい、と思う作品。