10.《ネタバレ》 隣人や友人、同じ立場だったはずの者同士のパワーバランスが突然崩れるタイプの物語、この手の作品にはとにかく弱いのです。わかっちゃいるのに、だいたい想像ついちゃうのに、どうしても衝撃を受けてしまう。
評価されづらい作品かもしれませんが、僕はこういう作品すごく好きです。観ているこっちは、アーリー(ブラッド・ピット)のことがよくわかっている分、平和そうに見える、よくある微笑ましい光景が、驚くほど些細なきっかけで壊れることを知っているわけです。そんなに大きなイベントがなくとも、この映画全体を覆う、人を不安にさせるこの空気感がたまらないのです。
その空気感を創り出しているのが、言わずもがなアーリーとアデル(ジュリエット・ルイス)。特にアデルは、人の不安な感情や依存心といったものをものの見事に具現化したような存在。その二人を一般人代表のモルダー、・・・・じゃなかった、ブライアンとその恋人の目線を通して描いてくれているので、何とも言えない臨場感を味わえるのです。言わばこの二人は観客のアバターのような存在。この二人がいることで、アーリーとアデルの異質な雰囲気がよりいっそう際立っているんじゃないかと思うわけです。
とは言え、アデルには一筋の希望の光が見られるのもこの映画のひとつのポイントでしょう。ブライアンの心の変化も気にはなりましたが、この作品はやはりアデルがメインのような気がします。もう完全に破綻した4人の関係を、ヨーヨーの話や写真の話をふって、泣きそうな顔で元に戻そうとするアデルが痛々しくて観ていられない。そこに来てラストのアデルのあの独白。
最高に切なく、最高に痛々しい余韻が残りましたね。
アデルをカリフォルニアに連れて行ってあげたかったです。