1.グリモー作品は、子供たちにわかりやすく明快なのが特徴。当然セリフは少なく、客を飽きさせないよう&テーマがハッキリするように人物設定や舞台設定に工夫が凝らされ、画面を見るだけで世界中の誰もが内容を理解する事ができます。それがこの頑固アニメーターを世界的に有名な映像作家へ押し上げ、多くの模倣作が生まれる事になった第一の要因でしょう。本作では多数のグリモー作品を並べて観る事で、彼の作品の持つ明快さ・単純さに気付かされます。それを理解できた上で最後に上映される『小さな兵隊』を観た時の感動はただ事ではありませんでした(単発で観てたらベタベタすぎてダメだったかも…)。子供に対する目線も明確。話が戦時のアニメ製作中断の件に及んで、子供から「戦争ってナニ?」と質問され、穏やかに、かつ即座に「その話はやめよう」と切り上げる気持ちのよさ。大人の世界と子供の世界の明確なボーダーが、彼の心に引かれている事を実感できる瞬間でした。同時に、彼の70年代作品ではそのボーダーが侵されてしまう事も実感できるのです。アニメが全世界的に迷走し、子供に対して優しい目線をキープしづらくなった現在、「アニメの原点はどうだったのか」「アニメーターは何を目指していたのか」がよくわかる作品だと思います。