1.《ネタバレ》 女性死刑囚を演じてオスカーを獲ったのは『モンスター』のシャリーズ・セロンが記憶に新しいですが、元祖は本作のスーザン・ヘイワードで、もっとも映画自体は『デッドマン・ウォーキング』みたいなテイストです。ロバート・ワイズは『ウェスト・サイド物語』や『サウンド・オブ・ミュージック』の様な大作の監督というイメージが強い人ですが、本来はフィルム・ノワールを撮ってきた人で、この映画もノワール的な色合いが濃い作品です。前半三分の一はヘイワードが軽罪を重ねた末に殺人容疑で収監されるまでを、ノワールっぽいカメラワークを交えながらスピィーディに見せてくれます。この映画が『モンスター』などと違うところはヘイワードはあくまで冤罪で死刑執行されたとしているところでしょう。彼女を有罪にするためにロス市警が使う手口のあまりの汚さには嫌悪感を催します。とにかく彼女が死刑確定するまでに登場する人物は、マスコミを含めてゲス野郎ばかり(ヘイワードも含めて)なのが特徴です。この映画の凄いところは収監されて死刑執行されるまでのセミドキュメンタリータッチの演出でして、ガス室の準備をする手順を黙々と見せたり、執行日直前まで何度も執行が延期されるところなど、観ている方まで打ちのめされる様な重苦しさが伝わってきます。ヘイワードの演技は確かに熱演なのですが、ワイズの緊迫感あふれる演出があってこそのオスカー獲得だったと改めて確信しました。死刑執行の様子をガス室の外で群がって見物する新聞記者たちの姿には、これほどシュールで醜悪なシーンも珍しいと思いました。