2.登場する様々な人間関係に内在する不安定さ。作品はあえて説明や台詞を極力抑えていますが、
登場人物の行動を追う、作品に貫かれる冷徹な描写は時に見る者をドキッとさせるものがあります。
壁に大きく貼られた少女の写真が部屋に舞い込む風に揺られてめくられていくシーンが印象的。
芸術的でもありますが、何ともいえない脆さや危うさのようなものを感じます。
その一方で窓から差し込む強い日差しやフル作動する扇風機。台湾の気候と共にそこで生きる人間の熱も感じさせます。
個々の関係が希薄な都会。それぞれの持つ孤独、不満。それらがやがて悲劇へと結びついていく。
今の社会にも通じる日常に潜む恐怖を徐々に浮かび上がらせていく巧みな話術に驚かされた作品でした。