1.《ネタバレ》 耳が聞こえない殺し屋が主人公。その主人公に殺し屋としての生き方と技を教えた友人のジョーとその恋人。メインの3人はもちろんのこと、たくさん出てくる脇の人間たちが、非常に丁寧に個性豊かに描かれています。
この作品は、バイオレンス、サスペンスとしての見所もあるし、人間ドラマとしても抜群に面白い。特に、心温まるロマンスパートは、本編の悲哀をより際立たせます。
肝心なのは、ロマンスパートに出てくる人たち。それは主人公が恋する心優しい女性のフォンであり、その同僚であり、フォンの祖母です。主人公の素性を知らない三人は、暖かい眼差しで主人公と接します。その様子を見ていると、主人公には、また別の生き方もあったのではないかと思えるのです。
そして主人公がフォンと心を通わせ、その後友人のジョーとその恋人、たった二人の友人を殺されたとき、はじめて自分が奪ってきた人々の命の重さを知るシーンが印象的です。
ちょっとしたことなんですが、時系列をちょっとだけずらしてみる演出が何気に凄い良かったです。特に後半。主人公がジョーの復讐を決行するシークエンスや、何気ない仕事の一つのように挿入された車の襲撃が、終盤主人公にとって深刻な局面を生み出す展開なんかがほんと見事です。
大変バランスが良いうえに、見所も多く、ハラハラするし、スカっとするシーンもある一方で、最後は泣けるという、映画として完成された一本です。力作です。