4.《ネタバレ》 今作は邦題のような荒々しさはあまり無い。
原題の「My Darling Clementine」の通り、詩情に溢れた愛と淡々とした復讐の物語。
伝説の保安官「ワイアット・アープ」兄弟とドク・ホリデイの復讐劇。
静かに草木を揺らす荒野、そして「殺られたら殺り返される」殺伐とした西部の世界。
降り注ぐ雨の描写が、この映画の静けさを物語る。
ワイアットが酒場で無法者を引っ捕まえる場面、
酒場で銃を抜いて場を制する場面、
ダダッ子ドクを連れ戻す疾走感、
クライトン一家の襲撃、
ラストの決闘とこれだけ見せ場があるにも関わらず徹底した静けさ。
「駅馬車」のようなドラマ面の人物像の掘り下げもあまりない気がする(前半のバージルとモーガンは空気)。
ただドク・ホリデイが馬車馬を走らせる頃から物語は「静」から「動」へと移り変わっていく。それまで退屈だったストーリーも、段々締まりを見せてくる。
平和な街にくすぶっていた「火薬」が「銃火」によって炸裂する瞬間。
仲間の仇を討つために、そして保安官として仕事を果たすためにアープたちは決闘の場へと向かう。
が、死が待っている決闘の場に堂々とした出で立ちで歩み寄る男たち!
それぞれが失った者のために、正義のため、何より愛する者を守るため、男たちは引き金を引く。
長き静寂の後に訪れる死の瞬間まで・・・。
愛する人を奪われていく主人公たちと、アープたちの手によって平和を取り戻し歓喜する住民たちの対比が生々しい。
今回のマチュアは文字通り捨て身のギャグを披露してくれた。
敵の背後を取っておきながら咳で位置がバレて撃たれるって・・・しかし柵に手をかけ相手を睨みつけての一撃はカッコイイので結果オーライ。
「赤い河」や「リオ・ブラボー」で好々爺だったウォルター・ブレナンも、昔は悪漢老クライトンとして立ちはだかる。
それが輪廻転生してジョン何とかさん(ジョン・ウェイン)の強い味方に生まれ変わったと考えると・・・胸熱。
そして決闘のラストでハンマーを打ち降ろして三連射するワード・バンドのカッコ良さは異常。
20世紀フォックス発売の特別編DVDに収録された「非公開試写版」も必見。
個人的にはこっちの方が好きだったりするのだ。