1.《ネタバレ》 拳銃を使わない映画 セックスをしない映画
携帯電話を使わない映画 復讐すらも無意味な映画
そこにあるのはふたつのカップに注がれたエスプレッソ
そして幾度も同じ台詞が繰り返される
目的はひとつ「自分こそ偉大だと思う男を墓場に送る」こと
そんな殺し屋の映画
物語の起伏となる要素をすべて排し
ただただ淡々と時間だけが直線上に流れていく
イザック・ド・バンコレ演じる孤独な殺し屋は
仕事中の堕落を一切禁じる
またパス・デ・ラ・ウェルタ演じるヌードの女は
すべてを破滅に導くファム・ファタールのような素振りだが
ファム・ファタールとしてはまったく機能していない
そしてティルダ・スウィントン演じるブロンドの女は
「上海から来た女」の話をし始める
しかしラストのビル・マーレイと対峙するシーン
一面鏡張りの部屋にしたりはしない
つまりこの映画はフィルム・ノワール的要素を散りばめながらも
それらを一切禁欲する 新たなるフィルム・ノワールと言えるだろう
ジム・ジャームッシュのスタイリッシュさはとても正しく
どのアングルも どのカットの繋ぎも
どのハイスピード撮影も どの音楽の挿入も
すべて納得させられるものだ
想像力さえあれば 映画には限界はないし
映画の行く路を決めることなどできない