2.《ネタバレ》 内容はどぎつくても言葉としては無機質に感じられるのが「神話」ですが、本作のあらすじを文章にしたら、まさに「神話」になるという印象です。特定の登場人物の心情に共感するような作り方では無いので、ストーリーから感動を貰いたい人には不向きな映画だと思います。私は最初からそこには期待していなかったので、というより、映像美を期待して観に行ったので、充分に満足させて貰いました。見どころは神が戦うシーン。人対人の戦いと神対神の戦いにきっちりと違いを付けています。スピードとパワーで。ゼウス、アテナ、ポセイドン、アポロンなど、聞き慣れた名前の神々が天上から降臨して闇の軍団と肉弾戦を繰り広げますが、まさに「肉弾戦」で、肉体の弾け飛び方が半端じゃなく凄まじい。そのグロさを美しく見せるのがターセム・シンらしい。広告では『300』のスタッフが作った映画と言ってましたが、個人的にはターセム・シンが作った映画と言って欲しい作品です。 『300』のザック・スナイダーも映像に強い拘りを持つ監督ですが、ターセム・シンは少し違うところを標榜しているように感じます。ストーリーそっちのけは二人とも似ていますが、ザック・スナイダーが映像の迫力に拘る人だとしたら、ターセム・シンは映像の美に深く沈潜して行くような耽美的な映像を作る人、というのが私の見立てです。本作は戦闘シーンが多く、ターセム・シンの絵作りが活きる素材とは言いにくい。前作『落下の王国』のような作品の方が彼の表現が活かせるのではないかと個人的には思う次第です。