1.男でも惚れてしまう男をこそ描いてきた加藤泰の映画ではあるが、私は加藤泰の映画の女が好きだ。『昭和おんな博徒』で好みじゃない江波杏子に惚れさせ、『花と龍 青雲篇・愛憎篇・怒濤篇』でも眼中に無かったはずの香山美子に惚れさせた手腕は半端じゃない。そしてこの映画の桜町弘子。惚れいでか!凛として強情で高飛車な面も見せつつもどこまでもどこまでも女。男気溢れる男たちも実に気持ちがいい。そして井川徳道が見せる様式美。内田良平が桜町に命をかけた喧嘩に行くことを告げるシーンだ。『緋牡丹博徒 お竜参上』の雪の積もる橋、『明治侠客伝 三代目襲名』の夕焼け空(あっ、どっちもそこにいる女は藤純子だ)に匹敵する美しい井川徳道の世界がここにある。いいっすよ、ここ。心の奥にあるいろんなもんを引っ張り出してくる。簡潔に言うと感動。感動を誘引する美があるんです。