4.《ネタバレ》 悲劇とも喜劇ともいえる作品。
本作のような社会派映画を独特かつパワフルな作品に仕上げたシドニー・ルメット監督はやはり素晴らしい監督だ。
視聴率に振り回されるテレビ関係者たち、テレビに振り回される視聴者たちを鋭く見事に描き出されている。
テレビによってムーブメントが形成されていく様は圧巻であり、ニュースも何もかもショー化していき、より過激になっていく様も恐ろしい。
いったん動き出した歯車は留まることを知らず、テレビという魔物が“怪物”を産み、“怪物”を産んだ当事者すらコントロールできなくなる。
そのような“怪物”を止める手段すらもメディアの道具にしてしまう辺りは“悪い冗談”としか思えないが、こういった一連の冗談は、もはや“現実”のものとなっているだろう。
カメラに映された悲劇的な事故や事件は、視聴者の注目を集め、繰り返しメディアで放送されたり、視聴率のために過激な“ヤラセ”や“煽り”が横行しているのも周知の事実である。
また、登場人物のほとんど全てが叫び、怒鳴りつけているのが印象的だ。
5人がアカデミー賞にノミネートされ、2人が受賞しているのは伊達ではない。
素晴らしい演技合戦が見物となっている。
個人的には、ピーター・フィンチが豹変して、完全にイってしまった演技が気に入った。
本作において、やや違和感があるのはホールデンとダナウェイの恋愛エピソードと思われるが、個人的にはこのエピソードは本作にとって必要不可欠なものであると思われる。
仕事に追われるあまり、恋愛を含めた“人間性”が欠如していることを端的に表しているエピソードだからである。
しかし、全体の流れから、やや浮いたような展開になってしまい、しっくりと来ないようにも感じられる。
この点に関しては、やや不満が残るところでもあり、上手くフィットするように調理ができていれば、より傑作として後世に語り継がれただろう。